循環型農業✖有機農業「菊池源吾牛」に懸ける新たなる挑戦

2023.03.13

  • Bleu-Blanc-Coeur
  • ヘルシーファーミング

人にやさしいお肉は、地球環境にもやさしいお肉

日本全国のさまざまな地域で一次産業を営む方々に、環境に寄り添い命をいただく食べもの作りに対する思いやこだわりについてお話を伺い、発信する「Journal」。

第1弾は、熊本県菊池市で昭和50年以前、祖父の代から畜産業を営まれている株式会社Saigoさん。

代々「畜産業」を生業とし、グループ農園である「菊池ユートピアファーム」の代表を務める増永優樹さんに、農業の楽園という壮大なテーマを元に取り組まれている「循環型農業」について詳しくお話を伺いました。

菊池源吾牛のステーキ
菊池源吾牛のステーキ

食べてみればきっと分かる。菊池源吾牛の奥深い旨さー

 あつあつのフライパンに牛脂を引いて、お肉を端からやさしくゆっくりと、寝かせてあげてください。

その瞬間、じゅわぁーっと勢い良く音をたてます。

と同時に、香ばしい香りが部屋中を満たしてくれます。その匂いだけで思わず唾をゴクリ。

頃合いを見てお肉を裏返すと、お肉には程よくこんがりと焦げ目がついています。お皿にお肉をそっと寝かせると、「菊池源吾牛」ステーキの完成です。

お好みで、醤油、塩、岩塩、こしょう、わさび、山わさび、ガーリックチップなどを添えてあげてください。

上質な脂が舌の上でとろけて、噛めば噛むほどお肉の濃厚なうま味が口の中に広がります。

サシがたくさん入っていますが、脂身が苦手な方でも食べられます。肉肉しい臭みがなく、他に類を見ない牛肉。それが、菊池源吾牛の牛肉です。

菊池ユートピアファームで育てられた黒毛和牛ブランド「菊池源吾牛」
菊池ユートピアファームで育てられた黒毛和牛ブランド「菊池源吾牛」

人の体のことを考えた「やさしいお肉」

「菊池源吾牛」を生産する株式会社Saigo
「菊池源吾牛」を生産する株式会社Saigo

「菊池源吾牛」を生産する株式会社Saigoは、1993年(平成3年)より

わたしもあなたも大切に。未来の地球を笑顔に

を理念として掲げ、緑あふれる田園文化が代々守られてきた熊本県菊池市七城町という地域で、食品加工・卸業・直販を行っています。

『健康を考えた場合、生産者である自分自身が食べられないようなものは、そもそも人様に提供することは断じてやってはならない』

という想いで農業を営んでいます。

  1. 誰が食べても安心で安全なお肉をつくらなければならない
  2. わたし自身のこともお客様のことも大切にしたい。

そして未来の子ども達が笑顔になれる食生活を、生産者である我々が守らなければならないと考えます。

そう語るのは、株式会社Saigoのグループ農園「菊池ユートピアファーム」代表の増永優樹さん。

「誰が食べても安心で安全なお肉」とは、一体どのようなお肉なのでしょうかー。

自然と農家と家畜をぐるりと繋げる「循環型畜産農業」

『菊池ユートピアファームでは、米や穀物などを収穫したあとに出る稲わらを牛に飼料として与え、その飼料を食べた家畜のふんから堆肥を作り、その堆肥で農産物を育てています』

と増永さん。

なるほど・・・。どうりで「菊池源吾牛」には、肉肉しい臭みを一切感じません。

  1. - わたしたちが普段食べているお肉(動物)は、一体どんな餌で育ったのだろう
  2. - わたしたちが口にするお肉が食べる餌は、どこのどんな土地から育ったのか

そう考えると「食の安全」とは、目の前のお肉だけではなく、環境や自然の恵みと繋がっていることに気付きます。

『環境を戻す取り組みの中で、農薬を使わずに有機資源を循環させながら農産物を生産し家畜を育てる営みを「循環型有機農畜産業」といいます。菊池ユートピアファームでは古来より、この地に伝わる「循環型農畜産業」を行い、自然の恵みによって飼育することを代々引き継いできました。』

と、張りのある声で自身の畜産のベースにある“信念”を吐露してくれた増永さん。

誰が食べても安心で安全なお肉をつくりたい

循環型畜産農業
農薬を使わずに有機資源を循環させながら農産物を生産する営み

ひと昔前までは当たり前のように行われてきた「循環型畜産農業」という取り組みは、多くの農家では生産性を上げるため、次第に農薬や化学肥料への依存が高まるようになってきました。

農薬や化学肥料の使用が増加することにより、土壌汚染・土壌破壊が起こり、有害物質が発生する問題は、農畜産業が抱える大きな課題に。

また、家畜の糞尿の処理が難しく水質汚濁などの問題も発生するようになり、このままでは農業も畜産も持続的な生産ができなくなってしまう可能性もあります。

しかし、菊池ユートピアファームでは、創業当時はもとより、現在に至っても従来の化学肥料や農薬だけに頼らない「循環型畜産農業」を徹底しているのです。

本来ならば規格外となるお米を飼料に変え、家畜の糞尿を堆肥化することで優良な作物を生産し、牛だけでなく、人間にも地球にも優しい理想的な農業を続けています。

『地球環境にもやさしい農業は、人にも家畜にも優しい。環境にやさしくなければ、持続可能な農畜産にはならないー。

効率化や利便性だけを考えると破壊に繋がりかねないところを、菊池ユートピアファームはサステナブルな畜産を、創業当時から守り続けているのです。

フードロスへの挑戦の背景。地球を守っていくために

1993年(平成3年)に、増永優樹さんの父・増永悦朗さんは「『農業の楽園』を創りたい」という夢を掲げ、「菊池ユートピア農場」を創業。“農業から人が集う楽園”を思い描き、こう名付けたのだそう。

悦朗さんは創業当時、まだ誰も“有機農業”“循環型農業”に取り組んでいない時代から、「農業を国の基盤とすることの必要性」を唱えており、循環型農業を提唱していたと優樹さんは当時を振り返ります。

「父は、近い将来直面するであろう少子高齢化を見据えて、お年寄りや色んな個性を持った子どもの居場所を、農業を通して繋ぎたい。そんな農業の楽園を創ることを夢見ていたのです」

優樹さんの母の増永美知子さん(現株式会社Saigoの代表)と優樹さんの家族3人で力を合わせて「菊池ユートピア農場はこれからだ!」と大きな夢を掲げた矢先、悦朗さんは膵臓がんを患い、志半ば52歳で他界。病気が発覚してからわずかひと月後のことでした。

「父を亡くして、母(美知子さん)は笑うことも仕事への意欲も失ってしまいました。そんな折り、近所の方々が、家で採れた野菜などを持ってきては、母を励まし優しい言葉をかけてくださるようになりました。

母は感謝の気持ちを込めて、頂いた野菜で漬物を作っては、お礼に食べてください…と少しずつ配るようになったのです。

近所の方々はその漬物を大変喜んでくださり、いつしかそれは、母の励みとなっていきました」

こうして美知子さんのお礼の漬物は近所の間でも評判となり、本格的に商品化へと進んでいったのです。

実は、近所の農家さんが美知子さんのところに持って来てくれる野菜は、“美味しいけれど沢山出来すぎて売れない廃棄されるもの”、だったのだそう。

「おいしい野菜たちなのに食卓にも昇ることができない…なんとかしたい!という思いで、母は困っている農家さんのおいしい野菜たちを買い取り、お漬物に加工していくことを決め、漬物工房西郷SUNを始めました」

今まで捨てられていた規格品の利用による食品ロスを防ぐためのサステナブル事業。フードロスへの挑戦には、こうした背景があったのです。

「当時は大変でしたが、父が農業の在り方の基盤を築いてくれたので、それを元に、母と共に次世代へと繋いでいこうと心に決めました。今になってようやく、父が描いていた楽園よりも小規模ではありますが、実現に向かってきていると思います。今は父が取り組んでた循環型農業に加え、循環型の有機農業で育てる取り組みを実現しています」

牛の健康=人間の健康。身体にやさしい脂質を生み出すオメガ3

「人が口にするお肉は、健康な牛でなければ安心できない」

潔いほどシンプルな言葉に続いて、増永さんはこう切り出しました。

「父は、昔から稲わらを使い、管理を徹底して、不健康な牛を生み出さないことにこだわっていました。 霜降り牛肉を生産するためには、牛に与えるエサは穀物ベースになります。

トウモロコシをたくさん食べることで、お肉になるし、脂になります。 でも、牛には大きな負担がかかるのです。穀物を多量に食べさせることで、ビタミンが抜けて目が見えなくなったり、足が腫れて、人間でいう“不健康な肥満体質”になるのです。

A4・A5ランクと呼ばれる牛肉を産み出すには、それなりの負担が牛さんにかかり、心臓血管系疾患やアレルギーなどの病気を引き起こす牛が多くいます。そこまで牛さんたちを追い込まなくていいのではと、感じます。」

生き物に人が携わる以上、人は、命を与るという意識を持って管理する責任があると話す増永さん。

人々の健康・牛の健康を実現すべく、2021年8月から、菊池ユートピアファームは新たな挑戦に踏み出しました。

それは、肥育牛には稲わらと飼料の中に、オメガ3脂肪酸を多く含むアマニ種子を混ぜ合わせて与えること。

アマニ種子を含んだ飼料
アマニ種子を含んだ飼料

オメガ3系脂肪酸は人の体内ではつくることができず、食事から摂る必要のある必須脂肪酸であり、他の脂肪酸と異なり、体の疾患を改善する性質を持っています。

そのオメガ3系脂肪酸はα-リノレン酸、EPA、DHAに分類されるのですが、EPAとDHAはサバやイワシなどの魚に多く含まれ、α-リノレン酸は植物のアマニに多く含まれています。

そんなオメガ3が含まれている菊池源吾牛は、健康を気にされてる方、美容を気にされてる方にとっても、罪悪感なく食せる牛肉といえます。

オメガ3を摂取することで人が健康になるのであれば、肥育牛も同じ。

「人が口にするお肉も健康な牛でなければ安心できないのでは、と考えています。アマニ種子を食べたことで、当園の牛たちは常に健康的な状態を保ち、お肉の脂質が変わり、オメガ3成分を含んだお肉へと変わっていくのです」

環境問題に配慮した循環型有機農畜産の取組みに加えて、オメガ3脂肪酸を含んだお肉。 それが「菊池源吾牛」であり、これこそが、人々の健康・牛の健康・地球の健康に繋がっていくのです。

美味いだけではない、菊池源吾牛から益々目が離せません。

食とサステナブルは切り離せない時代。牛にも人にも地球にもやさしいお肉を美味しく食し、活力の源であるタンパク質をたっぷりとチャージしてみてはいかがでしょうか。

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